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JMM冷泉さんより

 世界市場全体における品質管理に責任がある副社長であれば、
やはりこうした場での対応も本人ができなくてはダメ、そうした時代
なのです。では、そうした国際的な経営感覚とコミュニケーション能
力をもった人材をどう育ててゆくかですが、今の日本の公教育と受
験システムは全くこうした人材育成には対応していません。企業
内研修も、なども量と質が足りないと思います。ならば、どうやって
育成していくのか、私は全ては本人の心がけ次第だと思います。
具体的には次の7つの工夫が必要だと思うのです。

(1)ビジネス英語などというものはない。雑談や文化談義ができず、
パーソナルなコミュニケーションができなくては、小学生レベルの人
格としか見なされず最初から負け。

(2)マナーや品格は、一対一のポリティクス(政治)であり、個別の
心理戦に全て勝ち抜くべき。「より善良である」ことで相手を圧倒せ
よ。それが世界でのゲームのルール。

(3)日本人と一緒に海外出張するな。日本語の酸素ボンベを外せ。
海外で毎晩日本食店に逃げるな。

(4)出張とは海外市場の偵察であり、外国人向けの観光やショッピ
ングをしている暇があったら市井の息遣いに深く潜入せよ。

(5)常に国際摩擦の接点に立つこと。日本と外国のどちらかの一方
的な立場ではなく、利害衝突の中心で痛みを背負うことが国際人材
を育てる。

(6)各国に残る排外主義、自国中心主義のセンチメントを、「何故か」
が分かるまでトコトン体感せよ。コスモポリタンなリベラルの感性は、
その市場を代表しない。

(7)雑談時のデフォルトはナショナリストで結構。いわれのない自国
や自国文化への中傷には徹底抗戦せよ。日本人を “They” と言うな。
“We” とハッキリ言え。だが根拠のある忠告や指摘は感謝しつつ受け
入れるべき。

良い村上龍 from JMM

最近、「いいところを探す」ということを考えています。

きっかけは、以前ニューヨーク・タイムスに総選挙の結果について寄稿したとき
でした。政権交代が起こっても人々の表情は冴えないが、それは政府がすべて
を解決してくれないことを理解しつつあるからだ、という主旨のエッセイを書いて、
最後に、ポジティブなことを付け加えなければいけないと思いました。海外のメデ
ィアに日本のことを書くときや、インタビューを受けるときは、わたしはポジティブ
な要素を強調して伝えることにしています。

批判はしますが、海外メディアに向かって日本の悪口は言いたくないのです。そ
れは家族の悪口を外部に向かって言うのに似ています。そんなひどい状態の日
本に対してあなたはどうコミットしているのか、と質問されたら返答できません。
ずいぶん前ですが、フランスのテレビに生出演したときに、あなたの作品は退廃
的な風俗を描いたものが多いが日本社会は本当にこんなに堕落しているのか、
と聞かれて、堕落した部分がまったくない社会は存在しないし、現在日本は高度
成長後の新しい価値観を見出しつつあるところであり、多少の混乱はあるにして
も、雌伏の期間を経て、やがて世界をリードする国に生まれ変わるはずだ、という
ようなことを答えました。

さすがに照れ臭かったし、このままゆっくり衰退していくんだろうなと心の底では
思っていたのですが、そんなことは言いませんでした。ニューヨークタイムスのエッ
セイでも、最後に、「日本は子どもが大人になるときの憂うつを味わっている」と書
きました。「いいところを探す」というテーマに気づいたのはそのときです。日本の
いいところを探すということではなく、もう少し小さな共同体、つまり家族や友人た
ちや住んでいる街など、急には変化させることができない場所や人間関係につい
ては、「悪いところを見直す」ことも大事ですが、いいところを探す努力を払わないと
ポジティブに生きることがむずかしくなる気がしました。悪いところに目をつぶるとい
う意味ではありません。あくまで、「いいところを探す」のです。

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